倉知淳「星降り山荘の殺人」ネタバレ感想。もっと評価されるべきフェアプレー本格ミステリ。神の視点はミスリードかヒントか
- 作者: 倉知淳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/08/10
- メディア: 文庫
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ネタバレ感想です!
感想は微妙な人が多いこの本ですが、私はなんか好きだったよ。
フェア過ぎた。
っていうかタイトルwww
ある意味ネタバレ。
引っ掛けの原因になってる章の初めの四角い枠の「ワトソンは犯人ではありません」「ここで殺人が起きます」なんですが、意図的なミスリードと取る人が多かった。が、私には露骨なヒントで有難かった笑笑。
探偵役とされる人の人柄がそもそも最初から苦手意識ありすぎて。でも「探偵役はもちろん犯人ではない」ので、なにがなんでも「コイツが探偵役ではない証拠」を探そうとその章でワトソンと初めて出会う人物がもう1人いたのを見つけ、ビンゴだった。
だから各章のヒントはいります。「いらない」という感想はこの作品の個性の否定になる。
そもそもこの本を読もうと思った原因が「章ごとになにが起こるか明記されているにも関わらず注意深く読んでも騙される」という今までの小説とは一味違う仕掛けに興味持ったからである。
「どんなズルい仕掛けしてくるのかな」と期待してたが、あくまでフェアにヒントが出されていた。
私はどちらかというとアンフェアの方が騙されて気持ちが良いのだが、これはこれで面白い構造で、いつもなら「犯人推理当たって興ざめした」という駄々を捏ねかねないのに笑笑。
それに伏線だと思って勘違いしてた恥ずかしいところもあるんですけど。普通のミスリードをヒントとし、関係ないとこを深読みして勘違いするのが私らしい。「地元の強盗殺人」はてっきり動機と関係あるのかと思ってたが、動機は妙な存在感があるゴキ頭(と呼んでる時点で尊敬してるか怪しいけど)とホモだったからだし。びっくりしたよね。
伏線は、
やたらと自己主張の激しい推理をするし、
部屋に飾ってある凶器が形違うと気づくところや、
強行下山に乗り気なくせに、杉下君を巻き込んだ上にあっさり戻ろうとしたりなどなど。
ついでに裏表紙見たときから「探偵役」とされているはずの「スターウォッチャー」が「UFO研究家」の次に書かれていたこと。
怪しさしかない桶谷さん。
これ作者さん、読者騙す気ないでしょ…並の伏線の数々。
確かに意外な犯人にするなら、あいつか、ワトソン杉下か、なにかと杉下が気になってるまあ子ちゃんか、になる。それを一旦杉下→(杉下が勘違いして)まあ子→あいつ、と全部一度は疑ってみるラストの展開もなかなか好き。やたら頭の良さを杉下が強調してたまあ子が探偵役で間違いないんだけど、「合ってるよね?」という確認作業で後半読み切った。
珍しく私が読後にだーーーっと感想を殴り書きするくらいの満足度。
もっと評価されるべき作品。って感じ
ちなみに。こちらのサイトがお気に入りで。紹介されている叙述トリックどんでん返し系制覇が近年のひそかな目標
「葉桜の季節に君を想うということ」
「慟哭」
は読んでいたのですが、
「コレだあああ!!!」というものに出会えず。このサイト見てから
「十角館の殺人」はまあまあだったが
「密室殺人ゲーム王手飛車取り」
「ハサミ男」とこの
「星降り山荘の殺人」がかなりツボ。